衝撃加速度試験
1、目的
補修後の支柱が高剛性(靭性という変形しにくさ)だと変位が小さく抑えられ、車両衝突のエネルギーを充分に減衰できないため、衝突時の衝撃力が大きくなり乗員の安全確保の面で問題が生じる。
2、評価法
限界衝撃強さを確認するための試験(JISZ0119)は 正弦半波と台形波が必要とされますが、当該試験は衝撃吸収性の評価なのでブランク管とFRC装着鋼管との正弦半波のみの対比で評価する。
3、結果
ブランク鋼管径Φ114.3㎜とFRC装着鋼管径Φ114.3㎜の試供体を正弦半波で対比して評価した結果、ブランク管で正加速度は+2.276m/s2、負加速度ー2.314m/s2を示した。FRC管の正加速度は+2.207m/s2、負はー1.401m/s2(加速度グラフ)を示した。鋼管の変位、δ(㎜)はブランク管で123㎜、FRC管で148㎜(写真3)となった(試験結果の表1)
また、衝撃力はF = mv / ∆t(∆t = l/v (s))から、ブランク管、F=47865.61 N(4884 kgf)。
FRC管、F=39780.20 N(4059 kgf)となり、FRC管はブランク管より16.9%衝撃力が軽減する結果となった。
4、考察
FRC装着鋼管の曲げ強度はブランク鋼管より高い強度値にも拘らず、衝撃時の加速度はブランク鋼管と同等の値であった。さらに、負の加速度がブランク鋼管を100%とするとFRC装着鋼管は約63%加速度が小さかった。すなわち車両衝突時の衝撃吸収性が高く安全性に優れた構造体であり、これは、変位からも考察される。FRC装着鋼管は25㎜(写真:共試体の変形状態)変位量が大きいことや衝撃加速度試験の動画からも、衝突エネルギーの吸収性(減衰性)に優れた構造体といえる。
衝撃加速度試験 | 解説 |
---|---|
図1 | 1-1、本試験の目的 ガードレールの折れた支柱を直す場合、当該破損箇所の基礎部を掘り起し支柱を設置し直す必要があり、取り替え作業が厄介であり不経済でるから、基礎部を再利用するアンカーシステムとしてFRC(繊維強化コンクリート構造体)の適用を目指すもの。 1-2、懸念される問題 補修後の支柱が高剛性(靭性という変形しにくさ)だと変位が小さく抑えられ、車両衝突のエネルギーを充分に減衰できないため、衝突時の衝撃力が大きくなり乗員の安全確保の面で問題が生じる。 |
写真1 | 2、検証 衝撃試験で用いられる衝撃パルスは、最大加速度、作用時間、速度変化から構成されます。(図1)最大加速度は衝撃強さの指標で、大きければ大きいほど、より厳しい衝撃試験となります。作用時間は衝撃パルスの支柱への伝達特性が変わるパラメータで、長いほど幅広い固有振動数に衝撃が伝搬しやすくなります。速度変化は落下高さに依存し、速度変化が大きいということは、より高い落下高さから落下することが理解できます。 2-1、評価法 限界衝撃強さを確認するための試験(JISZ0119)は 正弦半波と台形波が必要とされますが、当該試験は衝撃吸収性の評価なのでブランク管とFRC装着鋼管との正弦半波のみの対比で評価する。 2-2、試験(写真1) 【実施機関】(一社)繊維強化コンクリート協会技術研修本部、 【試験日】令和4年7月15日 【機材】 ・衝撃加速度場所試験機 ・共和電業、メモリレコーダ/アナライザEDX-2000A ・共和電業、ASH-A-500「5000G」 高応答小型加速度センサ変換器 |
加速度グラフ | 試験結果の表1 1、ブランク管 加速度 (m/S2) :+2,276、ー2,314 変位 δ(㎜):123 2、FRC管 加速度 (m/S2):+2,207、ー1,401 変位 δ(㎜):148 また、衝撃力はF = mv / ∆t(∆t = l/v (s))なので 質量 m=300㎏、移動速度 v=4.43m/s、変位 I=0.123mと0.148mとした場合の衝撃力はそれぞれ 1、ブランク管 F=47865.61 N(4884 kgf) 2、FRC管 F=39780.20 N(4059 kgf) となり、FRC管はブランク管より16.9%衝撃力が軽減する結果となった。 |
写真2 写真3 | 7、考察 衝撃強さを確認するため試験(JISZ0119)方法に従って、衝撃吸収性の評価試験を実施した。なお計測周波数は1/20万(秒)とした。ブランク鋼管径114.3㎜とFRC装着鋼管径114.3㎜の試供体を正弦半波で対比して評価した結果、ブランク管でプラス加速度は2.276m/s2、マイナス加速度は2.314m/s2を示した。FRC管のプラス加速度は2.207m/s2、マイナス加速度は1.401m/s2(加速度グラフ)を示した。鋼管の変位、δ(㎜)はブランク管で123㎜、FRC管で148㎜(写真3)となった(試験結果の表1)。また、実施済みの曲げ強度試験では、最大荷重はブランク管で22.7kN、FRC管で34.2KNであった。よって、FRC管では曲げ強度はブランク管以上の値を示しており、衝撃時の加速度ではブランク管と同等の値であることから減衰性の高い構造体であり車両衝突時のエネルギー吸収性はブランク管と同等である。また、マイナス加速度がブランク管を100%とすると約63%と小さいことから衝突時の車両の反動が繊維特性により減衰されており安全性が高まる。このことは、変位にも示されており、ブランク管と比べFRC管は25㎜、(写真:共試体の変位)変位量が大きく衝撃力も17%低減されており衝撃吸収性と減衰性が高い構造体である。 後記:国内でこの規模の衝撃加速度試験の実施機関がなく、第三者の品質証明、試験報告書等は省略します。 以上 |